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光と重力の境界で——葛 本康彰が“空”を彫り直す

By James White
光と重力の境界で——葛 本康彰が“空”を彫り直す
光と重力の境界で——葛 本康彰が“空”を彫り直す
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🎵 光と重力の境界で——葛 本康彰が“空”を彫り直す

葛 本康彰は、彫刻とインスタレーションのあいだで“自然の条件”そのものを扱う現代美術家だ。重力、温度変化、雨や雪といった現象と素材の応答を待ち、その過程を身体的・精神的な経験として作品化する。個展のタイトルにも、空・肌理・境界といった関心が繰り返し現れる。

要点:葛 本康彰(葛本 康彰/Yasuaki Kudzumoto)は、自然現象と素材変形の時間を軸に彫刻・インスタレーションを制作する日本の現代美術家。奈良県で1988年に生まれ、京都教育大学と京都精華大学大学院を経て、現在は京都精華大学で非常勤講師として教える。

項目 情報
氏名 葛 本康彰(Kudzumoto Yasuaki / 葛本 康彰)
生年・出生地 1988年、奈良県生まれ
学歴 京都教育大学卒業/京都精華大学大学院 修了(博士前期課程)
現在の役割 京都精華大学 芸術学部 造形学科 特任講師(非常勤)
制作の軸 人間と自然の関係/重力・温度変化・雨雪などとの対話/廃材や市中素材
受賞の例 2024年 平和堂財団新進芸術家美術展 第30回記念特別賞 ほか

葛 本康彰とは——彫刻が「気象」に触れるまで

彫刻という言葉が、硬い物の形を思い浮かばせるなら、葛 本康彰の作品は少し違う。彼の関心は形だけではなく、形が生まれる条件——重力や温度の揺れ、雨や雪が素材へ与える“変化の速度”にある。目の前で完成するものより、変わり続ける過程が先に立つ。

彼は「人間と自然との関係」を制作の核心に置き、素材と対話する方法を積み重ねてきた。素材はただ“加工される対象”ではない。感覚的に扱いながら、変形のプロセスを身体的・精神的経験として受け止める。作品は、見た人の感情に加え、鑑賞者がその場の気配を想像する余白まで含んでいる。

葛本康彰が自然現象と素材の変化を扱う制作イメージ

奈良から京都へ——1988年生まれの学びの道筋

葛 本康彰は1988年、奈良県で生まれた。地元の気候や風景が制作の感覚に直接結びつくと断言はできないが、“人間と外界の距離”をめぐる問いが早く育った可能性はある。現代美術において、地域の時間感覚はしばしば、作品のテンポに残るからだ。

学びの軸は京都へ移る。京都教育大学を卒業し、さらに京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程を修了した。研究と実制作が交差する環境で、彼は自然現象を「観察」ではなく「関係」として捉える視点を強めていったように見える。現在は同じ京都精華大学で芸術学部造形学科の特任講師(非常勤)として教鞭も執る。制作と教育のあいだで、問いの形を絶えず更新している。

制作理念——重力・温度変化・雨雪を“素材の声”にする

葛 本康彰の中心テーマは、作品タイトルにも滲む。「境界」「肌理」「空」「冷え」といった語が繰り返されるのは、世界を固定された景色ではなく、連続する現象として扱いたいからだ。

自然現象との対話という方法

彼は重力や温度変化、雨や雪などの自然現象と対話しながら、素材に独自のフォルムやパターンを与える方法を開発してきた。ポイントは“結果としてできる模様”を狙うことではない。むしろ、変形の過程を含めて作品とする。素材の変わり方が、制作の中心になる。

素材は感覚的に扱われ、変形プロセスは身体的・精神的経験として回収される。視覚のみに閉じない鑑賞体験が生まれる余地がここにある。鑑賞者は、作品が「今そこにある」だけでなく、「この先も変わりうる」気配を読み取るよう促される。

廃材や市中素材の活用——“拾う”が終わらない

また、廃材や市中から集めた素材を使用したインスタレーションにも取り組む。重要なのは、素材を“安価な材料”として使って終わることではない。彼にとっては、素材が持つ履歴や手触りが、自然現象と結びつくことで、新しい接点になる。

里山を舞台にした野外芸術企画も、その延長線上にある。人間が作った器の中で完結するのではなく、外界に開かれた条件の中で作品が成立する。展示会場の静けさとは違う時間が、作品に割り込んでくる。そのことが、彼の制作を特徴づけている。

個展の歩み——タイトルが示す関心の連続

葛 本康彰の個展は、作品のテーマを抽象的に説明するだけではなく、制作の現場に近い言葉で“観察点”を示している。時系列で見ると、「空」「冷え」「境界」といった関心が、別の角度から何度も折り返しているのがわかる。

  • 2025年『境界または肌理、或いはその傍らの all surfaces encounter an edge of the sky』 STUDIO KAN(京都)
  • 2024年『空のあらまし spectacle in the air』 守山市民ホール(滋賀)
  • 2023年『℃ノ汀 cold traces in a transition』 2kwgallery(滋賀)
  • 2022年『Four Sequences』 galerie16(京都)
  • 2021年『なにもないとうつくしい something like a phenomenon or nothing』 大庄屋諏訪家屋敷(滋賀)
  • 2018年『眼の前の空を掬う everywhere we crawl in the air』 MU東心斎橋画廊(大阪)

たとえば2023年の『℃ノ汀』は、温度(℃)と“岸辺”をつなぐような響きを持つ。温度や湿度の変化が、単なる背景ではなく作品の輪郭を作るという発想と整合する。2024年の『spectacle in the air』も、空気が舞台になる感覚を前面に出している。

守山市民ホールでの展示を連想させるイメージ

グループ展と場の選び方——アートフェアが“条件”になる

葛 本康彰の活動は個展だけにとどまらない。中之条ビエンナーレ、学園前アートフェスタ、木津川アートといった地域密着型の展覧会に参加している。こうした場は、作品を“完結した展示物”として扱うだけでは難しい。屋外や地域の空気が介入し、作品の見え方が日ごとに揺れるからだ。

具体例:フェスやビエンナーレに現れる制作の適応力

  • 2025年 中之条ビエンナーレ(旧廣盛酒造、群馬)
  • 2024年 学園前アートフェスタ2024(近鉄学園前駅周辺、奈良)
  • 2023年 木津川アート2023(ロートリサーチビレッジ京都)
  • 2022年 イワミアーツプロジェクト2022(湯里まちづくりセンター、島根)

さらに芸術フェア「Tokyo Gendai」への参加も含め、国内外のギャラリーやアートフェスとの共同企画へ広がっている。ここで重要なのは、彼の制作が“展示場所の条件”を無視しない点だ。自然と素材の関係を扱う作家にとって、空間は中立ではない。場所そのものが、作品の文法になる。

受賞歴が示す評価軸——平和堂財団から新聞社賞まで

葛 本康彰は複数の賞を受けている。受賞歴は作家の人気を示すだけではない。審査する側が、どの点に価値を見いだしたかを照らし出す材料になる。

  • 2024年 平和堂財団新進芸術家美術展 第30回記念特別賞
  • 2022年 2021年度 平和堂財団芸術奨励賞
  • 2021年 Watowa Art Award 2021 Exhibition 大庭大介賞
  • 2020年 京都アートフォーラム 日本経済新聞社京都支社賞
  • 2019年 京都アートフォーラム 毎日新聞社賞

この並びを見ると、地域・財団・新聞社系の評価が同時に存在している。つまり、単に美術館向けの造形巧者としてではなく、現代美術の問いを押し出す作家として評価されてきた可能性が高い。自然現象と素材変形をテーマに据える姿勢は、時代の関心と合っている。

北白川と里山の現場——制作は“場所の運転”になる

葛 本康彰の活動は、北白川美術村での制作活動や、里山における野外芸術企画の企画・運営にも及ぶ。北白川美術村のように制作する人が密集する地域では、情報が集まるだけでなく、実験が加速する。誰かの試みが刺激となり、次の試作が生まれやすい。

一方、里山での野外企画は別の難しさがある。自然を扱う以上、天気は選べない。雨の日にだけ見える筋、雪の翌日にしか成立しない表情が出る。彼の理念に照らせば、これは欠点ではなく制作の一部だ。作品が“予定通りの見た目”を約束するのではなく、外界の条件が結果に影響することを受け入れる。

北白川美術村の制作環境を想像させるイメージ

オンラインで追える“今”——kudzumoto.com と Instagram

葛 本康彰の最新情報は、公式サイトとSNSで追うことができる。公式ウェブサイトは https://kudzumoto.com/。制作の告知、展覧会情報、作品に関する手がかりがまとまっている。Instagramは kudzumoto_yasuaki で、展示風景や制作の断片に近い投稿が見られる。

こうした発信を見ていると、彼が“完了した作品”だけで語っていないことがわかる。素材に触れる時間、天候や温度の変化を前提に進む制作の流れ、その場の観察が、断片として現れる。制作理念が、実際の行動として記録されている。

境界の先で——葛 本康彰の問いが投げる視線

葛 本康彰の作品は、自然を背景として扱わない。むしろ自然を、素材と同じように扱う。重力や温度変化、雨や雪が、作品の“形を決める側”に回る。結果として、彫刻は物体ではなく関係のかたちになる。人間と外界の距離が、固定されたままではいられないことを突きつける。

その姿勢は、個展の題名や受賞歴、そして里山での活動にも一貫している。空や境界、肌理という語が繰り返されるのは、世界を理解し直そうとする執着の表れだ。見終わったあと、手元の温度や風の匂いまで意識が戻ってくる。そんな種類の余韻を残す作家として、葛 本康彰は今後も注目に値する。

Frequently Asked Questions

葛 本康彰(葛本 康彰)の主な制作テーマは何ですか?

「人間と自然との関係